2005年09月04日

ユーロピウム

以前、「スペクトル色々」CRTのスペクトルを測ってみたとき、赤色の発光がスパイク状の鋭いピークだったので「これは一体どんな物質のスペクトルなのだろう…」と思っていたわけですが、先日「一家に一枚周期表」を眺めていたら、ユーロピウムの項に「カラーテレビの赤色蛍光体」、「昼光色の蛍光灯」と書いてありました。

そこで化学便覧(改訂5版)を見てみると確かに、I巻の「表5.69 代表的な蛍光・りん光体の特性」という項目(I-p743)にカラーTV用CRTの発光体として青:ZnS:Ag、緑:ZnS:Cu,Au,Al、赤:Y2O2S:Euなんて書いてあります。

ユーロピウムはランタノイドですから、スペクトルにあった鋭いピークはf軌道の遷移だったのですね。

ここで無機化学の教科書を見てみますと、シュライバー曰く、

大部分のランタノイドイオンには色がついていて,固体の錯体中におけるランタノイドイオンのスペクトルは,d金属錯体に比べてはるかに狭くかつ明瞭な吸収バンドを示すのが普通である.これらのスペクトルは弱いf-f電子遷移に関連している.吸収バンドが狭く,また配位している配位子の種類に鈍感なことは,f軌道の動径方向の広がりが,充満した5sおよび5p軌道よりも小さいことを示している.

だそうです。

これはつまり、f軌道は5s,5p軌道よりも深いところにいて化学結合と関係ないので、軌道準位が周りの物質の影響を受けない。その結果スペクトル幅が鋭いということでしょうか*1

*1: シュライバーの説明は「スペクトル幅が狭い→f軌道が深いところにいる」という順序になっていますね。
なお、「弱い」f-f電子遷移とあるのは、f-f遷移が本来禁制であるからであろうと思います。

投稿者 nomoto : 2005年09月04日 22:44 | スペクトル
コメント

心は助けることが微笑むことができなかったと言いました: "からの人々のうち。王室に値するああ。
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Posted by: paul smith 時計 : 2013年10月13日 08:15
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